2006年03月28日

すし屋でのこと

292 :おさかなくわえた名無しさん :2006/03/14(火) 16:19:49 ID:0INdhUKh
「いらっしゃいませ!」と、あいさつも威勢のいいすし職人Uさん(25)。

 5年前には誰も今の姿を想像できなかったはずだ。Uさんは今で言うところのニートそのものだった。

高校を中退後、家でゴロゴロし、スナック菓子をおやつにテレビゲームに興じる毎日を送った。ぶくぶくと太り、体重は90キロに迫った。
見かねた母親が、勝手に決めてきた就職先が近所のすし屋だった。

当初、Uさんの動きは鈍く、あいさつも満足にできなかった。オヤジさんは一目見て、「こりゃ、ひと月もたねえな」と思ったらしい。
きつく叱(しか)られることがなかったのも、あまりに頼りなかったからだった。

長髪を五分刈りにすると、格好だけはらしくなったものの、与えられた仕事は開店前の掃除と閉店後の洗い物のみ。
開店中は、ただ立って見ているように言われた。

でくの坊のように立ち続けながら、Uさんの心境に変化が訪れた。
「オヤジさんみたいになりたい」。誰に言われたのでもなく、そう思うようになっていた。

1年後、店の包丁研ぎを任された。「包丁は職人の命だから」と自分用の包丁も渡された。
責任のある仕事ができる喜びで、手荒れの痛みも気にならなかった。
翌年には、卵焼きを伝授された。最初は型崩ればかりで、失敗作は持ち帰らねばならなかった。
家で卵焼きばかり食べているうちに、徐々に腕を上げていった。


すしを握らせてもらえるようになったのは最近のことだ。カウンターに初めて立つ日、
オヤジさんが両親を店に招待した。
Uさん自身は「来るな」と言ったのに、両親は来た。観念してすしを握った。

父親は「わさびが利きすぎてるぞ」と目尻をぬぐった。母親も涙ぐんでいた。
照れくさくって、逃げ出したくなった。
でも、自分が職人の端くれだと思い出したら、気っ風のいい言葉が自然に出てきた。

 「すし屋でしんみりするのはやめてくれよ」



posted by 管理人@ at 20:07 | Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
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